涙、滴り落ちるまで
「……菫って、紫乃の……」

「そう。ボクも前世の記憶を持ちながら、紫乃たちの住む町とは違う町に転生したんだ……瑠依、今から過去の世界に来る前に……ライラ様から聞いた話をするね。良く聞いてて」

そう言いながら、真剣な顔で僕を見る菫を見つめた後、無言で頷く。

「……未来から過去に来たとある人物の手によって、未来が大きく変わろうとしているんだ。それを阻止するために、ボクと瑠依は過去へと飛ばされた。そして、そのキーホルダーは……」

「静瑠を実体化させることが出来るキーホルダー、だよね」

菫の説明を聞きながら、僕はさっき菫から渡されたキーホルダーに目を移した。

「……そうだよ。もしかしたら、静瑠の力を借りることになるかもしれないからねぇ」

『……なぁ、お前らは何者なんだ?』

「何者……って、言われてもね。話していた通り、僕らは未来から来たんだ。そうか……静瑠なら……静瑠、僕らに何があったのか教えて欲しい。僕の記憶上では、こんな出来事は起こってないんだ」

『……未来から……分かった。話してやる。俺の分かる範囲で、になるけどな』

「それでも、構わない……そうだな、確かめたいことがあるから……静瑠を実体化させてみるか」
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