涙、滴り落ちるまで
僕が首を傾げると、菫は「……いや、感情が豊かになったなって……」と微笑む。

「……それ、過去に来る前に紫乃にも言われたなぁ……」

僕が苦笑すると、菫は「……それで、これからどうしよう……」と首を傾げた。

「……それなんだよね。ライラ様に話してみようかな……」

「それが妥当かもしれないね……でも、あの時みたいに皆で固まっているかもしれない」

菫の言葉に、僕は前世で初めて静瑠と会った日のことを思い出す。確か、ライラ様の屋敷で静瑠のことで皆と話してたんだっけ……。

「……それでも、行くしかないでしょ。静瑠、ありがとね……また、何かあったら聞くかもしれない」

静瑠の返事を聞く前に、僕は呪術を解除して静瑠を元に戻した。宙に浮いたままのキーホルダーを手に取ると、菫に向かって「行こう」と笑う。

僕の表情を見た菫は、少し驚いた顔をしたあとに「あぁ」と微笑んだ。



ライラ様の屋敷に着いた僕らは、前世で静瑠が僕らのことを見ていた木の上から、ライラ様の屋敷の様子を窺っていた。息を潜めて、物音を立てないように静かに。

「そこにいるのは、誰……ですか?」

庭に出てきたライラ様は、しっかりと僕らの方を見ながらそう言う。
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