涙、滴り落ちるまで
「…………僕です」

木から飛び降りて庭に着地した僕は、真っ直ぐにライラ様を見つめた。

「……ライラ様、信じてもらえるか分かりませんが……僕の話を聞いてもらっても、よろしいですか?」

「瑠依、何しに来たの?」

どこからか声がして声がした方を見てみると、そこには前世の紫乃がいる。紫乃の手には紫乃の武器である本が握られていて、戦闘態勢だということにすぐに気づいた。

「……紫乃……」

「……おっと……瑠依の邪魔は、させないよ」

そう言いながら、紫乃の近くに菫が着地する。

「……さっきの……君は、瑠依の味方なの?」

「ふふっ。そうだよ……でも、君たちは何か勘違いをしているね。紫乃は……いや、菫ならこの違和感に気が付かないかな?」

菫の言葉に、紫乃は「……この声は、菫……?」と驚いた顔をした。ライラ様は、静かにどこか警戒した目で僕らを見ている。

「…………ライラ様、瑠依の話を聞いてあげましょう……瑠依は、僕らを傷つけようとする……人じゃ、ないから……」

どこか恥ずかしそうに、紫乃は言った。その言葉を聞いて、僕は無言で微笑む。

「……そうですね。瑠依、すみません……とりあえず、皆さん屋敷の中に入ってください」

ライラ様の言葉に、僕と菫は顔を見合わせると同時に頷いた。
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