涙、滴り落ちるまで
「……!」

紫乃の言葉に、僕は「……そうだね。ごめんね……」と謝った。僕と目を合わせた紫乃は安心したように微笑むと、僕から手を離す。

「……少しだけ、様子を窺うか……」

僕の呟きに、紫乃と近くにいた菫は無言で頷いた。

『…………そういや、あいつ……どこかで見たことある気がするな……』

その場で悪霊を見つめていると静瑠の声が聞こえてきて、僕は「え?」と声を出した。

『……どこで見たのか、覚えてねぇけどな』

「……」

僕は静瑠の話を聞きながら、静かに悪霊を見つめ続ける。

「そういや、あいつはどこに行った?俺が操っていた、青髪のやつは!」

「声、大きいなぁ……青髪って、僕のことかな?」

皆から離れた位置から様子を窺っている僕らの耳に、普通に届くくらいの声量で悪霊は叫んだ。

「…………急に弾かれたんだよ!あの、悪霊さえいなければ……」

「どういうことだ?」

僕が首を傾げると、静瑠は『実はな、お前が未来から来る前に……瑠依に取り憑いたあいつを追い払ったんだ』と説明してくれる。

「……そっか……」

「しかし、あの青髪と一緒にいる悪霊は……どうして、俺を追い出したりなんかしたんだろ?俺と同じ悪霊なのにな。悪霊が死神の味方をするなんて、おかしいとは思わない?あの悪霊も可哀想だよね……あいつなんて、裏切り者だから消えちゃえば良いのにさ?」
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