涙、滴り落ちるまで
そんな話を静瑠としていると、近くから「瑠依!」と紫乃の声が聞こえてきて、僕は紫乃の方を向いた。

「紫乃……」

「……様子を窺うんじゃなかったの?」

そう言って苦笑する紫乃に、僕は「ごめん……」と呟くと、静瑠から顔を背けるようにして悪霊に目を移す。

「……はぁ、全く……相棒である静瑠のことを悪く言われて腹立つのは分かるけど、1人で突っ込んで返り討ちにあったら意味ないんだからね?」

「うん。分かってる……でも、勘違いしないでよ?腹立ってても、頭は意外と冷静だからね?」

「それも知ってる……まぁ……様子を窺っているだけじゃ意味なさそうだし、これで良かったのかも……」

紫乃に目を移してみると、紫乃は悪霊を見つめながらいつの間にか手に持っていた本を開いていて、その近くにいた菫は短剣を構えていた。

「……そうだね」

「……君たち、本当につまらないね。もっと、遊びたかったのにさ……」

不満そうな顔で僕らを見た悪霊は、刀を僕に向かって突き付ける。

「特に、君。俺を追い出してから、別人みたいに変わったよね……君は、一体何者なんだ?」
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