涙、滴り落ちるまで
あれから数日後の朝。
「急だけど、今日は転校生を紹介する」
チャイムが鳴って、担任の先生は入って来るなりそう言った。
……いや、急だね?
「入っておいで」
そんなことを思いながら、僕は教室に入って来た人物に目を移す。
淡い紫色の髪に、紫の目の……って菫!?
「初めまして。遠くの町から引っ越してきました、紫藤菫と言います。皆さん、仲良くしてくれると嬉しいです」
そう言って、僕と目が合った菫は微笑んだ。席は紫乃の近くらしくて、ちらりと紫乃の方を見てみれば、紫乃は戸惑った顔をしている。
……やっぱり、そうなるよねぇ……。
いつの間にか休憩時間に入っていたらしく、僕は楽しそうに菫と話している紫乃を見つめていた。
「瑠依くん……幸せそうに見えるの、僕の気のせい?」
急にクラスメイトの男子に話しかけられて、僕は「へ!?」とクラスメイトの方を向く。
「……僕、そんな顔してた?」
「してた、というより……雰囲気、かな」
「……雰囲気か……でも、僕……幸せ、なのかもしれない」
クラスメイトの言葉に、僕はそう返すと紫乃に目を移した。
……僕……幸せ、なのかな……そっか。僕は、今……幸せなんだ。
この幸せが、いつまでも続きますように。