涙、滴り落ちるまで
「……ソル、ありがとう」

僕が笑うと、ソルは「頑張ってね」と言って地面を強く蹴って跳ぶと、屋根の上に着地した。そして、どこかへと走ってく。

「……とりあえず、佳奈さんのお姉さんがいる所まで行こうか」

僕の言葉に、佳奈さんは頷いた。

「お兄ちゃん……出来れば、呼び捨てで呼んで欲しい……ダメ、かな……?」

「分かったよ」

僕は、そう言って微笑んだ。



僕は、総合病院の入口の前で立ち止まる。

……病院の中から大きな悪霊の気配がする……。

「……お兄ちゃん、どうしたの?」

佳奈の声が聞こえてきて、僕は佳奈の方に目を移した。佳奈は、不安そうに僕を見上げてる。

「何でもないよ……佳奈、僕から離れないで。何があっても、絶対に……」

僕がそう言うと、佳奈は頷いた。それを見た後、僕はドアに手を触れる。

そこに意識を集中させれば、死神が地上のみで使える霊道が開くんだ。霊道を通れば、壁をすり抜けることが出来るみたい。

前、ソルからそう教わった。霊道を開くのに色々と条件があるみたいだけど、詳しくは分かんないや。

霊道を開いて、僕は佳奈と一緒に病院の中に入る。佳奈が後ろを向いたから、僕も後ろを向いた。開いた霊道は、徐々に小さくなって消えてく。

「……とりあえず、行こうか。病室、分かる?その階まで階段で行くことになるけど……」

佳奈に問いかけると、佳奈は頷いた。
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