涙、滴り落ちるまで
「そういや、引っ越すとは言ったけど……詳しい場所までは教えなかったからな……私も分からなかったから……ごめんね」

綾は僕らが12歳の時に、僕が生前で暮らしてた町から遠く離れた町に引っ越したんだ。

「いや、良いよ」

そう言って、僕は微笑んだ。それを見た綾は、安心したように微笑む。

「……瑠依、何か変わったね」

「え……?」

「だって、あの時の瑠依は……」

そう言いかけた綾は、僕から目線を逸らすと口を閉じた。

「……綾には、僕が変わったように見えるんだ……僕は、変わってないよ。何も……」

僕がそう言うと、綾は「瑠依が気づいてないだけだよ」と言う。

僕が教えて、と言おうとすると、綾は僕の口に人差し指を当てた。

……教えないつもりだな。

「……いつか分かる?」

僕から手を離した綾に問いかけると、綾は優しく微笑んで無言で頷く。

「ねぇ。今からサーカスが始まるんだけど……瑠依も一緒に見る?」

「……僕も?」

僕が首を傾げると、綾は「うん」と頷いた。

「サーカス……ずっと瑠依と一緒に見たかったんだ……瑠依は、小さなサーカスの団員だったでしょ?だから、ずっと1人で見てるしかなくて……」
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