涙、滴り落ちるまで
僕がそう言うと、男性は『上手くなれるさ』と僕にボールを渡すと丁寧に教えてくれた。

半日も経たないうちに連続で基本技が出来るようになって、男性は『すごいね』と僕の頭を撫でる。

『えへへ……』

僕が笑うと、男性は『君、近くにサーカスのテントがあるんだ……一緒に行かない?』と僕を見つめた。

『行く!』

僕は、男性の手を掴む。男性は僕の手を握り返してくれて、男性と一緒に町を歩いた。たくさん話をしながら。

男性……後に僕が所属することになった小さなサーカスの団長は、とても優しい人だったんだ。

『……そっか……それで、瑠依くんは大道芸に興味を持ったんだね』

団長は、広場に建てられたテントの前に来ると中に入る。そこでは、数人の団員が皿回しをしたりしていた。

『瑠依くん……いつでも遊びに来ていいよ。その時はジャグリング、教えるから』

団長の言葉に、僕は頷いた。



それから半年経ったくらいかな。

ジャグリングの全部の技が出来るようになった僕は、団長から両親に事情を話してもらって、サーカスの団員になることになったんだ。

あの時……両親は僕のことなんてどうでもいいのか、興味無さそうにしていたような気がするな……。
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