涙、滴り落ちるまで
「……」

さらに気配を感じ取るのに集中しても、どこから悪霊の気配がするのか分からない。

……どこかで、悪霊になりかけてる霊がいるんだろうか……もしかして、祐希さん?そう考えると、急いだ方が良いのかもしれない。でも、祐希さんに生前の記憶を思い出させても良いのかな……もし、祐希さんの生前の記憶が辛いことばかりだったら、すぐに悪霊になってしまうかもしれない。

僕は、そっと祐希さんに目を移す。そして、祐希さんに聞こえないように綾に話しかけた。

「……綾、もしかしたら……祐希さん、悪霊になりかけてるかも」

「え?」

「……微かに気配を感じる程度だから……確実に、とは言えないけど……」

僕がそう言うと、綾は「そっか……」と祐希を見つめる。

「……綾、僕から離れないで」

「分かった……」

少しの間祐希さんを見つめてた綾は、僕に目を移すと頷いた。

「……まずは、どこから行こうか……その前に一つだけ聞きたいんだけど……祐希さん、いつから霊の状態でいるか分かる?」

僕が祐希さんに問いかけると、祐希さんは何かを考え込むと口を開く。

「……もう数か月も地上を彷徨ってるかもしれない……それでも、何も思い出せないんだよね」

「数か月も彷徨ってる、か……」

「瑠依、どうしたの?」
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