涙、滴り落ちるまで
「…………少し急ごうか。いつ悪霊になってもおかしくはない。記憶を思い出して悪霊になることもあるけど、祐希さんの未練を解決しないことには……どうすることも出来ないから……」

「そうなんだ……」

祐希さんは、そう言って悲しそうな顔をした。そんな祐希さんを見た綾は「大丈夫。私たちを信じて!」と微笑む。

「……」

正直言って、綾が羨ましいな。僕は、綾みたいに優しい言葉をかけることが出来ないんだ。生前の話だけど、瑠依って優しいよねって綾に言われたことあるけど……。

「……瑠依!ぼうっとしてないで行こうよ」

僕が色々と考えてると、誰かに腕を引かれて我に返った。綾が、僕の腕を掴んで僕を見つめてる。

「ご、ごめん……」

「何か考え事?」

「違うよ。さぁ……行こうか」

そう言って、僕は微笑んだ。そして、綾と祐希さんの後ろを歩く。

「……」

僕は近くから人間でもなく悪霊でもない気配を感じて、立ち止まった。

「……誰?」

僕が問いかけると、僕の前を歩いてた綾と祐希さんは立ち止まると僕の方を向く。僕は、気配がする方へと体を向けた。

「……少しは成長したんだね……瑠依」

そう言いながら物陰から出て来たのは、最近姿を見かけなかった透だった。

「もう死神になって1か月は経つからね」
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