涙、滴り落ちるまで
僕と透の言葉に、綾と祐希さんは驚いた顔をした。

「……じゃあ、ボクも地獄に……?」

「……」

怯え切った様子の祐希さんを見た透は、神妙な面持ちでじっと祐希さんを見つめる。

「……透?」

僕が透に声をかけると、透はゆっくりと僕を見た。

「瑠依……僕に手伝えることはある?」

「は?」

透の言葉に、僕は驚く。それを見た透は「何を勘違いしてるの?」と僕を睨んだ。

「……僕は、罪のない霊を無理やり地獄へ送りたくないんだ……地獄の死神は、地獄に堕ちた霊が死神になる。だから、冷酷な死神が多いんだ……でも、僕は違う」

僕を見つめながら、透はそう言う。

「……だからと言って、僕は君たちのように優しい人間じゃない」

「……」

綾は、そう言って妖しく笑う透をじっと見つめていた。

「……綾?」

「何でもないよ……あの、名前を聞いても良いですか?」

「僕?僕は……透」

「名字は?」

綾の問いかけに、透は何かを考え込む素振りを見せる。

「……知ってどうする?」

「……言いたくないなら、言わなくても大丈夫です。私は、若松 綾花と言います……この子は、記憶がない霊の中川 祐希くん」

「……よろしく!」

そう言って、祐希さんは元気よく笑った。
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