涙、滴り落ちるまで
「記憶がない……ねぇ」

透は、そう呟くと祐希さんを見つめた。

「瑠依……この子が死んで、何日経つ?」

「……数か月」

透の問いかけに僕が正直に答えると、透は「……意外と近くにいた……」と僕を見る。

「透くんに数か月も地上を彷徨ってる霊について聞かれた時、教えないって言ってたけど教えるんだ……」

「……手伝ってくれるんでしょ?」

「まぁね……言ったからには、手伝うさ……それで、僕は何をすれば良いの?」

「……僕と一緒に悪霊と戦ってほしい」

僕がそう言って透を見ると、透は少し考えた後「分かった」と頷いた。僕は、歩き始めた綾の後をついて町を歩く。

しばらく歩いてると、急に祐希さんが立ち止まった。僕らも立ち止まって、祐希さんを見る。

祐希さんは空を見上げてて、祐希さんの視線を辿ってみると僕の視界に大きな建物が映った。

「……僕の、通ってた小学校……」

祐希さんは建物を見上げながら呟くと、走り出す。僕らは、祐希さんの後を追いかけた。祐希さんは、学校の正門前で立ち止まる。

「……少し思い出した……」

祐希さんは、そう言って道を歩き出した。

「祐希くん、どこに行くの?」

「近くの広場。道を思い出したんだ……」

綾の問いかけに祐希さんはそう答えると、小学校から少し離れたところにある小さな交差点を曲がる。
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