涙、滴り落ちるまで
「綾!!」

嫌な予感がして、僕は素早く綾を僕の背中に隠した。僕の腕に、痛みが走る。黒い炎が弾けて、そこから姿を現したのは祐希さんじゃなくて大きな悪霊だった。

「……え?」

僕は綾を連れて、僕らから離れた場所にいる透に近づいた。

「……祐希の死因は自殺か……自殺した霊は、普通の霊よりも悪霊になるのが早い。自殺してすぐに悪霊になるケースが多いんだ」

透の言葉に、綾は驚くと僕を見つめる。

そっか……僕も自殺したからね……でも、僕は自殺してから天国に行くまでの記憶がないんだ。実は、僕も悪霊になっていた……のかもね。

「……それにしても、悪霊になりかけている段階で攻撃してくるとは……」

僕は、右腕にある切り傷に目を移した。

「珍しいね。普通は、完全に悪霊になってから攻撃してくるのに……もしかして、祐希……悪霊の才能がある?」

そう言いながら、透は刀を作り出すと構える。

「瑠依と一緒に戦ったら良いんでしょ?」

「……うん」

僕は透の言葉に頷くと、大きな弓を作り出して構えた。

「……なるほど。普段刀を使って戦う瑠依が、弓を使うってことは……悪霊は任せといて」

僕が弓を作り出したことで何かを察した透は、刀を片手に悪霊に向かって走り出す。
< 57 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop