涙、滴り落ちるまで
「……っ」

僕は、ソルさんの言葉に俯いた。僕に突き付けていた木刀を下ろして、ソルさんは僕の頭に手を乗せる。

「ごめん。言い過ぎたかも……上出来だよ。初めてで、あれだけ刀を振れたら十分だ。俺と一緒に、強くなろうよ」

顔を上げると、ソルさんは優しく微笑んでいた。



僕の青い柄に水色のリボンが付いた刀と、ソルの赤い紐が付いた短剣がぶつかり合う音が響く。ソルはその場から飛び退くと、逆手で短剣を握り直した。

ソルと出会ってから、気が付けば1年が経った。まだ死神になれてないけど、最初の頃と比べると大分強くはなった気がする。

「……ねぇ、瑠依……そろそろ地上に行ってみる?」

「え……?」

「瑠依は、大分強くなった。今の瑠依なら、悪霊を倒せると思う」

短剣を消したソルは、僕を見つめた。僕は刀を消して、無言で頷く。

「……瑠依は初めてだったよね。地上に降りるの。俺について来て」

そう言って、ソルは歩き出した。僕は、ソルの後を追いかける。

村から少し外れた木で囲まれた道を通ると、僕が初めて天国に来た時に見たような泉があった。

「……ここの泉から、死神は地上に降り立つんだ」

ソルは長袖のシャツを捲ると、手を泉の中に付ける。そっと両手で水を掬い上げて、その水を飲み始めた。
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