涙、滴り落ちるまで
小さな異変
「とりあえず、天国の入り口に向かおうか」
天国に帰ってきた後、ソルはそう言って歩き慣れた道を歩く。
「瑠依は、久しぶりかな?天国の入り口に行くの……」
「……そうだね。初めて天国に来た時以来かも」
そんな会話をしながら歩いてると、村の隅の方にある小さな泉の前に立ち止まった。泉の中には、天使の羽に輪っかが付いた石像が建ってる。
「……これは『祈りの泉』と呼ばれてる泉で、ここでお祈りをすると、行きたい場所まで連れて行ってくれるんだけど……死神しか使えないんだ」
そう言いながら、ソルは泉の中に入って石像の前に立った。
「ほら、瑠依も」
ソルに促されて、僕は泉の中に入るとソルに近づく。思ったよりもこの泉は浅くて、僕の足首が浸かる深さ。
僕よりも10cmくらい背の低いソルは、ふくらはぎ近くまで浸かってるけど。そういや、ソルって……背は低いけど、イケメンなんだよな……。
「……じゃあ、始めるよ」
僕がソルの隣に立つと、ソルはそう言って石像に手を触れると目を閉じる。
「……天国の入り口まで導きください」
「……っ!」
ソルがそう呟くと、石像に生えていた天使の羽が弾けた。光の粒となって、僕らに降り注ぐ。