涙、滴り落ちるまで
「ここは、天国です」

「……そっか。ボク、死んで……死ぬ前の記憶が無くて地上を彷徨っていたら、死神のお兄ちゃんが助けてくれて……って!死神のお兄ちゃん……いや、瑠依さん!?」

僕の方を見た祐希さんは、驚いた顔で僕を見る。ソルは「……死んでからのこと、覚えてるんだ」と祐希さんを見つめた。

「覚えてるよ?瑠依さんと透さんが、悪霊になったボクと戦っていたことも……瑠依さんと透さんの会話で、ボクは悪霊になったんだなって感じた」

そう言って、祐希さんはソルに目を移す。

「悪霊になった霊って、ほとんどが死んだ後のことを覚えてないんだ……祐希さん、今何歳なの?」

「12歳」

「……」

祐希さんがそう答えると、ソルは何かを考え込むような表情をすると黙り込む。

「ソル?」

「……ごめん。とりあえず、天国に行こうか」

そう言って、ソルは歩き出した。その後を、僕と祐希さんはついて歩く。

「え?ここ……天国なんでしょ?」

祐希の問いかけに、ソルは「一応ね」と返した。

「ここは、難しく言うと天国と地上の狭間になるんだ。死神は、ここを『天国の入り口』と呼んでいる」

「……そうなんだ……」

「ここも含めて天国、ということかな」

そう言ったソルは、建物の中に入った。
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