涙、滴り落ちるまで
この泉から、霊たちは自分の住む村に行くんだって。

僕の方を向いた祐希さんは、泣きそうな顔をする。

「……祐希さん。綾……じゃなくて、僕と一緒にいたお姉さんは『辛い時は、辛いって言わなきゃダメ』って言ってたけど……僕は、そうは思わない。笑いたきゃ笑え……その代わり、誰も気づかないよ……自分が、どれだけ辛い思いをしてても、助けて欲しくてもね……」

「……」

僕の言葉に、祐希さんはじっと僕を見つめた。そして、祐希さんは「ありがとう!」と笑う。次の瞬間、祐希さんは光に包まれると空高く飛び上がった。

そして、祐希さんの住む村のある方向に向かって飛んでいく。僕は祐希さんの姿が消えても、さっきまで祐希さんがいた場所を見つめていた。

「……じゃあ、瑠依……任務に戻ろうか」

ソルの言葉に、僕はソルに目を移す。そして、無言で頷いた。



僕とソルが綾と陽菜の所に戻ると、2人は楽しそうに話していた。

「……陽菜、そろそろ帰ろうか」

ソルの言葉に、陽菜は「そうだね」と返すと綾に手を振ってどこかへと消えていった。ソルも陽菜の後を追いかけるように、どこかへと消えていく。

「瑠依……近くの公園で少し話そう」

綾は、そう言って僕を見つめる。僕は「……分かった」と頷いた。
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