涙、滴り落ちるまで
「……今日は、何だか疲れたな」
綾は小さな公園にあるベンチに座ると、体をぐっと伸ばした。
「祐希の未練を解決するのを、手伝ってもらったからね」
「そうだね。祐希くんの未練、一体何だったんだろ?」
「さぁね」
僕がそう答えると、綾は僕から目を逸らすと少し黙る。そして、僕をもう一度見た。
「……瑠依は、好きな人いるの?」
「……知ってどうするの?言ったら、綾を傷付ける」
僕は、綾の好きな人を知ってる。綾の好きな人は、僕。前、綾に告白されたから。あの時は、ちゃんと本心を言って断ったよ。
「それでも、教えて欲しい……私は、ずっと瑠依が好きだった……もう一度、言いたかったけど……もう遅い、のかな……」
「……」
綾の悲しそうな顔を見ながら、僕は黙る。
……ごめんね。僕は……僕は、誰にも恋をしたことがないんだ。
「……分かってる。瑠依は、誰にも恋をしたことがないってこと……私を、恋愛対象として見てないってこと……それでも、私は……瑠依が好き。その想いは、今でも変わらないんだ」
「……」
「瑠依のサーカスを初めて見た時、私……すごいな!って思ったんだ……私も瑠依みたいに、皆を笑顔にできる人になりたいって……きっと瑠依のパフォーマンスを見て、そう思った人は多いと思うよ」