涙、滴り落ちるまで
「……っ!」

綾の言葉に、僕は驚いてしまった。綾は、優しい笑顔を僕に向ける。

「……瑠依は、瑠依が思ってる以上に素敵な人間なんだよ。だからさ……自分を最低な人間だ、なんて思わないで」

「……」

綾の言葉に、ズキンと胸が痛んだ。

どうして、綾もソルも僕に優しくするの?僕なんて、居なくても良い存在なのに……。

綾は立ち上がると、僕を抱き締める。

「……え?」

「辛かったよね……支えられなくて、ごめんね……」

綾は僕の肩に顔を乗せると、泣き始める。僕を抱き締める手に、力が入った。

「……」

僕が無言でその場で立ってると、綾は落ち着いたようで「ごめん」と僕から離れると見つめる。

「瑠依、ちょっと息抜きに散歩しようよ」

綾の言葉に、僕は頷くと綾の隣を歩いた。

「……そうだ。瑠依なら、何か分かるかな……2日前からこの町で不審死が多発してるんだ」

「そうなんだ……」

「2日で10件くらい不審死が起こってて、そのほとんどが健康な人だから誰も原因が分からないって……」

「……原因は、もしかしたら……悪霊かもしれない。悪霊って、色んな種類がいるんだよ……普通の霊を襲うもの、生きた人間に嫌がらせをするもの、生きた人間を襲って魂を食べるもの……でも、生きた人間を襲う悪霊が生まれる確率って極めて低いらしいんだ」
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