涙、滴り落ちるまで
前にソルから聞いたことを綾に伝えると、綾は「そうなんだ」と呟く。

……でも、おかしいな……悪霊がいるなら、死神が気づくはずだけど……もしかして、気配を消している……?

「……瑠依!」

綾の声に、僕は立ち止まった。僕の目の前に、二階建ての一軒家よりも大きな悪霊が現れる。

……この悪霊、気配がない……それに、ぱっと見ただけでは普通の霊と間違えてしまいそうだ。

――瑠依。気配がない悪霊と出会ったら、逃げた方がいい。本当に危険だ……気配を消しているから……相当賢い悪霊じゃないと、気配を消すなんてことは出来ないから。

ソルの言葉を思い出して、僕は綾の腕を引っ張って悪霊と反対方向へ走り出した。

「瑠依……?」

「あの悪霊は、危険だ。悪霊が大きければ大きいほど強くなって、形が人間に近づけば近づくほど賢くなる」

綾に簡単に説明しながら、ひたすら走る。僕の目の前に悪霊が着地して、僕は立ち止まった。

「……っ!」

風を切る音がした瞬間、僕の体は吹き飛ぶ。僕の体は、近くの塀に叩き付けられた。

「瑠依!!」

「……大丈夫……」

地面に座り込んで、心配そうに僕を見る綾に微笑む。悪霊は、素早い動きで綾の体を持ち上げた。

……綾を助けないと……。
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