涙、滴り落ちるまで
「……綾を、離せ!!」

自分でもびっくりする程大きな声が出る。呪術で刀を作り出すと、僕は悪霊に向かって走り出した。

……あれ?いつもよりも体が軽い……。

そんなことを思いながら、僕は悪霊に斬りかかる。悪霊は、僕の攻撃を避けると僕を見据えた。

「……っ!」

どこからか飛んできた矢が綾を掴んでる腕に刺さって、悪霊は綾を離す。僕は、急いで綾を抱えて悪霊から距離を取った。

「瑠依……手伝いに来たよ」

声がした方を見てみると、塀の上には背丈ほどある弓を片手に持ったソルと、剣を持った陽菜が立ってる。

「ソル……陽菜……」

陽菜は、塀から飛び降りると悪霊を見据えた。それを見た悪霊は、消していた気配を出す。嫌な空気が、周りを漂っているような気がした。

「……ソルは、他の悪霊を浄化することに専念して」

「分かった」

陽菜の言葉にソルは頷くと、弓に矢を番えると空に向かって矢を放つ。放たれた矢は、数を増やすと僕らの周りに降り注いだ。

空中に悪霊がいたようで、いくつかの光がソルの付けているブレスレットの中に入っていく。

「……すごいね……周りは、ソルに任せるよ。瑠依……今、ここにライラ様が向かっている。時間を稼ぐよ!」

そう言って、陽菜は悪霊に向かって走り出した。
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