涙、滴り落ちるまで

「……分かった。綾、弓を持った子の側にいて！」

僕がそう言うと、綾は心配そうな顔で僕を見つめる。僕は、綾を安心させようと微笑んだ。

「……」

綾は僕をじっと見つめた後、頷くとソルのいる方向に向かって走り出す。

僕はソルの近くに綾がいるのを確認した後、刀を構えると悪霊に向かって走り出した。

「……っ！」

ヒュン、と風を切る音がした瞬間、僕と陽菜の体は同時に吹き飛ぶ。

そして、僕の体は塀に叩き付けられた。その衝撃で、刀が地面に落ちる。痛む腕を手で押えて、顔を上げた。

「瑠依！」

「……綾……」

声がする方を見ると、綾は心配そうに僕を見ていた。

「大丈夫……」

僕はそう呟くと、辺りを見渡す。一緒に吹き飛ばされた陽菜の姿はなくて、ソルは「陽菜！」と塀から飛び降りると走っていった。

「……っ！」

悪霊はソルの後を追いかけるように、走り出す。僕も悪霊の後を追いかけた。

悪霊は、道路に飛び出した小さな女の子に攻撃しようとする。

「……危ない！」

そう言って綾は車道に飛び出して、女の子の体を押した。次の瞬間、悲鳴が聞こえる。地面に倒れた綾を見て、通行人は騒ぎ始める。綾に背中を押された女の子は、呆然と綾を見つめていた。

「事故だ！誰か、救急車を！！」

「え……？」