涙、滴り落ちるまで
綾は、地面を強く蹴ると悪霊に斬り掛かった。僕は、その様子をその場で見つめる。

「……」

綾の体が吹き飛ばされて、綾は僕の近くに着地した。

「こんな感じで、悪霊に近づけないんだ。瑠依かソルくんなら倒せるかもしれない、と陽菜ちゃんが……」

「だから、陽菜は仕事中なのに天国に来たんだ……」

綾の言葉にそう呟くと、僕は悪霊を見つめる。悪霊をじっと見ていると、半透明の白い膜が悪霊を球体に覆ってるのが薄らと見えた。その膜の色の濃さは、場所によって違う。

その膜は、徐々に消えていく。僕は、刀を構え直すと綾を見た。

「……綾、ちょっと下がってて」

「え?分かった……」

僕は悪霊に向かって走り出すと、さっき見えた膜の一番薄い場所を斬り付ける。そのまま悪霊とさらに距離を近づけて、悪霊に斬りかかった。

悪霊は、光に包まれると僕のブレスレットの中に入ってく。

「……」

僕は刀を消すと、綾に近づいた。綾は「すごい……」と僕を見つめる。

「……数秒だけ悪霊を覆ってる膜が見えて……その膜の一番薄い所を狙って攻撃したら、吹き飛ばされることなく悪霊に近づけたよ」

僕がそう言うと、綾は「つまり、あの悪霊は見えない膜を張って近づかせないようにしてたのか……」と言った。
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