涙、滴り落ちるまで
「綾花ちゃん、瑠依……」

後ろから声がしたから後ろを向くと、そこには陽菜と俯いたソルが立ってる。

「……瑠依……」

ソルはゆっくりと顔を上げると、僕を見つめた。いつもの赤い目じゃなくて、淡い桃色と片方だけに黄色のグラデーションがかかった目の色をしてる。

「ソル、大丈夫だよ」

不安そうに僕らを見るソルを見た陽菜は、ソルに向かって優しく微笑んだ。

「……俺の、本当の目の色……なんだ。俺、生前の記憶がないから、死ぬ前のことは良く分からないんだけど……俺は、目の色が原因でいじめられてたみたいで……俺が死んだ後、ライラ様が本当の自分を受け入れてくれる人が現れるまで、目の色を変えてくれてたんだ」

「そうなんだ……あれ?」

僕が首を傾げると、綾は「どうしたの?」と僕を見つめる。

「この目の色をした子……僕は知ってる……どこかで、見た記憶が……」

僕は、ソルに似た男の子と少し話をしたがあることを思い出した。

「……そうだ。思い出した……僕が10歳の時、サーカスのテントがあった広場で、話したことがあるんだった……」

僕がそう言うと、ソルは驚いた顔で僕を見る。

「名前までは知らないけど、今のソルと同じ目の色をした子だったから……多分、ソルだと思うんだけど……」

あの時の記憶が、鮮明に蘇った。
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