涙、滴り落ちるまで
「……分かりました」

僕と綾は、ライラ様の言葉に同時に頷く。

「ありがとうございます。これからは、2人にはその町に行ってもらうのですが……その町に繋がっている泉は、この近くにあるんです。一緒に行きましょうか……」

ライラ様は、そう言って歩き始めた。



「瑠依、この町って……」

ライラ様の住む屋敷から数分歩いた所にある泉を通って出て来た場所は、僕と綾が昔暮らしてた町だった。

「……懐かしいね。僕らが生前の時に暮らしてた町じゃん」

「そうだね。とりあえず、悪霊を探さないと……」

綾の言葉に頷くと、僕らは町を歩き出す。

僕が死んでからもう2年は経つのに、何も変わってないな……。

そんなことを思いながら歩いてると、微かに悪霊の気配がして僕は立ち止まった。

「…………綾、悪霊の居場所が分かった。近くにある運動公園だ。急ごう」

僕はそう言うと地面を強く蹴って、屋根の上に飛び上がると屋根から屋根を飛び移って、運動公園を目指す。

「……!?」

運動公園には大きな悪霊がいて、その悪霊と戦ってるのは……白いパーカーに黒い長ズボンを着た男性だった。

「生きた人間……だよね?」

綾は、男性を見つめながら呟く。僕は、死神でも生きた人間でもない気配を感じながら「多分、生きた人間だと思う」と返した。
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