涙、滴り落ちるまで
「晴輝が12歳の時、晴輝が生まれた時からいる飼い猫が亡くなって……ずっと寂しそうにしてた晴輝を、僕は近くのサーカスに連れて行ったんだ。そしたらさ、晴輝……瑠依くんのパフォーマンスを見た途端、笑顔になったんだ。僕、あの時思ったよ……瑠依くんには、人を笑顔にする才能があるって」

「……っ!」

僕に、人を笑顔にする才能が……?そう言われると、何だか胸が温かくなるな……。

ふと綾に視線を移せば、綾は僕を見て優しく微笑んでた。

「ん……?」

綾は、近くにある木に顔を向ける。少し見つめた後、綾は立ち上がると木に近づいた。

「綾、どうしたの?」

僕は、立ち上がると綾に近づく。綾が見つめてる木の陰から、半透明の藤色の髪の子が顔を覗かせて僕らを見つめてた。

「君は……?」

可愛らしい男の子だね。髪が長くて、目もぱっちりしてて……女の子みたいだ。

夏樹さんの問いかけに、藤色の髪の子は姿を見せるとぺこりと頭を下げる。

「……えっと……八神 紫乃(やがみ しの)と言います……16歳です」

「えっと……紫乃さんって……女の子?男の子?」

綾は紫乃さんの性別に困ってるみたいで、首を傾げながら紫乃さんを見つめた。

「……僕の性別、どっちだと思いますか……?君が感じたままで良い……」
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