涙、滴り落ちるまで
「……僕、紫乃を連れて天国に行きたいんだけど……」

僕はちらっと紫乃を見ると、そう呟く。

「……そうか。呪術が使えるとはいえ、紫乃くんは死神じゃないから……一旦紫乃くんの未練を解決して、紫乃くんを天国に送らないといけないのか……」

「でも、僕……未練が分からない……菫も分からないって言ってる……」

「……」

僕がじっと紫乃を見つめてると、薄らと半透明の糸が紫乃に巻き付いてるのが見えた。

「……あの糸……何だろう……」

『あの糸を斬れ。そうすれば、あいつの未練が断ち切れるぞ』

「え……?」

どこからともなく聞こえてきた声に僕は辺りを見渡すけど、紫乃と綾と夏樹さん以外誰もいなかった。

それに、この声……前も聞いたような……?

『怖いか?なら、代わりに俺が斬ろうか……あいつごとな……』

「……っ!」

その言葉に、僕は呪術を使って刀を作り出す。僕が刀を握ったのを見て、綾は「瑠依?」と不思議そうな顔で僕を見た。

「今から、僕は紫乃の未練を無理やり断ち切る」

「瑠依くん……その方法で紫乃くんを天国に?その方法を使える死神は、数少ないけど……」

「……声が聞こえる。紫乃に巻き付いてる糸を切れ、と……」
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