涙、滴り落ちるまで
「……晴輝……」

「…………おかえり」

ソルの様子を見た陽菜はソルに近付くと、無言でソルを抱き締める。

「……」

陽菜に抱き締められたソルの瞳から、涙が零れた。

「……少し、思い出した……んだ……小さい頃の記憶……思い出すのが怖い……でも、全部思い出したい……俺がどんな人生を歩んできて、どんな死に方をしたのか……知りたい」

ソルのその言葉に、陽菜はソルから離れるとソルを見る。目に涙を溜めたまま、ソルは陽菜を真剣に見つめていた。

「……瑠依がいる前でも構わない。生前の俺のこと……陽菜が知る限りで良いから、教えてもらえないかな?」

陽菜は少し黙ったままソルを見つめた後、優しく微笑むと「……分かった」と頷く。

「……秋元 晴輝……これが、ソルの生前の名前だよ。晴輝は、夏樹さんの2歳年下の弟なんだ……夏樹さんは、嘘をついていない」

「……っ!」

陽菜の言葉に、ソルは驚いた顔をした。

「私と晴輝は、家が隣同士で物心がつく前からの付き合いだった。私の両親と、晴輝の両親が仲良いこともあってね」

「……」

「晴輝は、小学生の頃から目の色が原因でいじめられていたんだ。私が止めに入ったら、いじめは止んだんだけど……でも、晴輝は私が知らないところでいじめられていたらしいんだ」
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