君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
ノートごしのあなた

住む世界の違う男の子

「ねえねえ、昨日の音楽番組見たー?」

「あ! 見た見た! あのグループ私も好きでさー」

「今日の放課後カラオケいかない?」

「行きたーい。新曲歌う!」

 
 クラスメイト達の楽しそうな会話が聞こえてくる昼休み。

 だけど私はその中のどの会話にも混ざらずに、自分の席に座っていた。

 いけない。

 みんなの声が大きくて、つい集中が途切れちゃった。

 私は一度息を付いた後、机の上に開いていた本に目を落とした。

 そしてすぐに、小説の物語の中へと入り込む。

 こうすれば、私は本の中の住人。

 今日読んでいたのは、本格的なファンタジー。

 何ページが読んで頭の中に情景を思い浮かべるだけで、私はすぐに魔物に囚われたプリンセスになれる。

 周りの景色なんて、目に入らない。

 別にいじめに遭ってるとか、そういうわけじゃない。

 新学期になってすぐくらいの時は私に話しかけに来る子はいたし、私だって二年生こそは友達を作ろうって頑張っていた。

 だけどどうしても……あの時のことが思い出されちゃって。

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