君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 でも、私は樹くんと恋する相手には相応しくないと思う。

 だって、樹くんはかっこいいし、人気者なんだ。

 そんな人は、同じように美人でみんなから好かれている子が合っていると思う。

 私なんて、彼とは釣り合わなすぎる。

 「私なんて」って思っちゃダメって樹くんには言われているけれど、恋愛に関することとなると、また別だと思う。

 やっぱり恋人同士になれるのって、似たような感じの人だって思うから。

 そんな風に「樹くんとは友達でいるのが楽しいんだ。彼に恋なんてしていない」って、言い聞かせる日々を送っていたある日のこと。

 放課後、図書室で私は図書委員の仕事をしていた。

 今日は琴子は欠席だったからひとりだ。

 琴子が休みなのは珍しいから、心配になって連絡をした。

 琴子からは昨日気になる男の子と夜長電話をしちゃって、その後も眠れなかったから休んじゃったって返事が来た。

 体調が悪いんじゃなくてよかったけれど、休んだ理由が面白くて私はひそかに笑ってしまった。

 ――長電話かあ。

 樹くんと夜電話なんかしたら、私だって眠れないかも。

 なんて思わず考えてしまう。

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