君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 ――ああ、やっぱり悟くんのことを好きだった私の気持ちは、間違いじゃなかったんだ。


「悟くん、言ってくれてありがとう。……そうだったんだね、恥ずかしくてあんなこと」

「――うん。ごめん、俺ガキだったんだ」

「中学生の時だもんね……」

「本当にごめん。俺ずっと、栞ちゃんに謝りたくて。でもなかなか言えなくて……。こんなに時間が経っちゃって、ごめん」


 何度も「ごめん」と言う悟くん。

 彼もずっと悩んでいたのかもしれないなあ。

 でも謝るのだって、勇気がいることだよね。

 ――勇気を出してくれて、ありがとう。


「隣のクラスになって見かけるようになって、今度こそ言おうって決めたんだ。この前の体育の時は、タイミングが合わなくて言えなかったけど」

「――そうだったんだね」


 本当によかった。

 ずっと嫌われているんだと思っていた。

 だけど、そうじゃなかった。

 長い間悩み続け、私のすべてを変えてしまったあの出来事。

 だけど実際は、ちょっとしたすれ違いだったんだ。

 悟くんを恨む気持ちは不思議とまったく無かった。

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