君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 彼にとって、疎遠になった私なんてもうどうでもいいはずなのに、ちゃんと謝りに来てくれたことが本当に嬉しかった。

 悟くんを前にして、私がそんなことを思っていると。


「栞ー、図書委員の仕事もう終わった? ……って、悟?」


 樹くんがそんなことを言いながら、図書室に入ってきた。

 私がモタモタ仕事をしていたから、痺れを切らしたのかもしれない。


「ごめん樹くん。もう終わるよ。あの、ふたり知り合いなの?」


 樹くんが悟くんを見て、気安い感じで名前を呼んだので私は尋ねてみた。


「知り合いも何も。俺と悟は親族だよ」

「えっ!?」

「うん、俺たちいとこ同士。母方の繋がりだから、苗字は違うけど」


 ふたりの言葉に驚く私。

 まさか、このふたりに繋がりがあるなんて。

 そういえば、ちょっと雰囲気が似ているかもしれない。

 ……女の子にモテそうなところとか。


「そうだったんだね。びっくりだよ」

「いや、俺も栞と悟が知り合いだったなんて意外だよ。友達なの? でも去年も今年もふたりってクラス違くね?」


 樹くんが何気なくそう言うと、悟くんが顔を曇らせる。

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