君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 私たちの間にあったことを思い出したのだろう。――中学の時にあったことを。


「ああ。中学が同じで、ちょっと」


 悟くんが樹くんから顔を逸らして言った。

 彼にとって言いづらいことだからか、声が段々と小さくなっていった。

 すると樹くんはハッとしたような顔をし、私の方を見てきた。


「……栞」

「えっ?」

「もしかして中学の時に栞にひどいことしたのって、悟?」

「あ……」


 悟くんの態度に、樹くんは察したようだった。

 私がこの前彼に話した「ラブレターを書いた私に『気持ち悪い』と言った男子」が悟くんであることに。

 だけど突然尋ねられた私は、なんて答えたらいいのか分からなかった。

 違うよって否定すると嘘になってしまう。

 だけどそうだよとも言いづらかった。

 悟くんを責めてしまっているようで。

 すると、答えない私に樹くんは確信したらしかった。

 やっぱり悟くんが例の男子であることを。


「悟、お前……!」

「! い、樹くん!?」


 樹くんは悟くんの胸倉をいきなり掴んだのだった。

 私はあたふたしてしまった。

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