君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 まさか樹くんがここまで怒るなんて。


「お前何してんだよっ! 栞のこと傷つけやがって……!」


 樹くんは血走った眼で悟くんを睨みつけながら、彼を怒鳴りつける。

 胸倉をつかまれているため苦しいのか、悟くんは苦悶の表情を浮かべていた。


「……それについては、ごめんとしか言えない。本当に栞ちゃんには申し訳ないことをした」


 悟くんは苦しそうな声でそう言った。

 さっき、彼からの心からの謝罪に胸が打たれた私だったけれど、さらに彼の申し訳ないという気持ちを深く感じた。

 だけど樹くんは、悟くんを掴んだまま離さない。


「謝って済む問題かよ! 栞はずっと……」

「樹くんっ。大丈夫! 私、もう大丈夫だから!」


 私はやっとのことでそう言って、樹くんの言葉を遮る。

 ずっと私が悟くんにされたことを気にしていて、友達作りがうまくできなくなってしまったということを、悟くんに知られたくなかった。

 彼が今後罪悪感を抱いてしまいそうで。

 謝ってくれたのだから、今後はそんなこと気にしてほしくなかった。

 すると樹くんは、ようやく悟くんを離した。

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