君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 だけどまだ彼を睨みつけている。


「……さっき悟くん、昔のこと謝ってくれたの。ずっと私のこと気にしていたんだって。だからもういいの。私、大丈夫だよ」


 そんな樹くんに向かって、私が本心を言うと、彼はちっと小さく舌打ちをした。

 そして私の手を取り、図書室のドアに向かって歩き出した。


「い、樹くん?」

「栞、もう行こ」


 戸惑いながらも、私はそれに従う。

 図書室を出る間際に、悟くんと目が合った。

 彼がとても歯がゆそうな顔をしていたので、切ない気持ちになる。

 図書室を出ると、樹くんは力強く扉を閉めた。

 そして私の顔を心配そうにのぞき込みながら、こう言った。


「あんなにひどいことされたのに……。あいつのこと、許すの?」


 樹くんは、私のことを心から案じてくれているんだと思う。

 だから悟くんに本気で怒ってくれたんだろう。

 ――だけど、私は。


「だって悟くん、わざわざ謝りに来てくれたんだ。同じ高校にはなったけれど、別々のクラスでもう関わることなんてきっとないのに……。そんな私のところに来て、ごめんって」

「でも……!」

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