君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように

あなたが恋をさせてくれた




 映画は、流行りの少女漫画が原作の青春恋愛ストーリーだった。

 だけど私も樹くんも、原作の漫画を読んだことがなかったから、内容はまったく知らない状態での鑑賞だった。

 前半はコミカルな場面と恋愛が絡んだ場面が半々くらいで、ドキドキしながらも楽しい気分を味わえる退屈しない映画だった。

 だけど後半になり、ヒロインが大病に侵されていることが発覚し、ふたりの恋愛が壊れてしまいそうになる。

 思い合っているふたりなのに、一度離れ離れになってしまった。

 ど、どうなっちゃうんだろう。

 好き同士なんだから、ずっと一緒に居て欲しいよ……。

 ヒロインに感情移入してしまって、私は泣きそうになりながらストーリーを見守る。

 泣くのを堪えるのに必死で、肩を震わせてしまった。

 手にも力が入り、拳をぎゅっと握りしめてしまう。

 ここが大勢人のいる映画館じゃなければ、遠慮なく大泣きしていただろう。

 ――すると。


「……!」


 そんな私の手を、樹くんは自分の手のひらで優しく包み込んだ。

 驚いた私が樹くんの方を見ると、彼は私に向かって微笑んで、ゆっくりと頷いた。

 ――きっと、大丈夫だよ。

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