君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 映画のことで泣いたんじゃないよ。

 優しい樹くんと友達になれたこと。

 もう人づきあいなんて無理だろうと思っていた私に、こんな素敵な人が近くに来てくれたこと。

 そして、恋なんてもうできないだろうと思い込んでいた私に。

 あなたが恋をさせてくれたこと。

 樹くんに関するいろんなことで胸がいっぱいになって、私は泣いちゃったんだよ。

 その後はいつものように、カフェに寄っておいしいケーキを食べながら映画の感想を言い合った。

 映画は本当に良かったと思う。

 ――だけど、私は。

 したり顔で映画の内容について樹くんに話しながらも、心の中は彼のことでいっぱいだったんだ。

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