君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 病気で恋を諦めるのは、本当にもったいない。

 せっかく人を好きになれたのだから。

 私は昨日の映画をふと思い出した。

 病気に負けずに思い合い、結ばれたヒーローとヒロインのことを。

 だけど現実はきっと、映画みたいに甘くないんだよね……。

 彼はもう、自分でどうするかを決めている。

 きっと悩みに悩んで、決断したんだと思う。

 だから私のような顔も名前も知らない人が、口を出すことじゃない。

 切ない気分になりながらも、私はそう決める。

 すると琴子が「ごめーん遅れたー!」って言いながら図書室に入ってきた。

 ノートの彼が病気だってことが発覚してから、琴子にノートの内容については話していない。

 彼だってあまり人に知られたくないだろうから、言わない方がいいと思ったんだ。

 だから私は歯がゆい気持ちを心の奥底にしまい込んで、琴子に笑顔で接した。
 
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