君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 だけど、彼に本気で恋をしてしまった私にとっては。

 ――それだけじゃ物足りないんだよ。

 私はあなたの特別になりたくなってしまったんだ。

 その後数分歩いたあと、樹くんの家に到着した。

 白い外壁で、北欧風のおしゃれな一戸建てだった。


「樹くんち、かわいくてきれいなおうちだね」

「そう? ま、きれいなのはそうかも。まだ越してきて一年ちょいだからさ。俺、元々違う県に住んでたんだけど、高校入学の時にこっちに引っ越してきたんだ」

「あ、そうだったんだ! だから中学の時に樹くんがいなかったんだね」


 よく考えれば、この辺は私と中学の学区が同じだから、樹くんが私立に行っていない限り同じ中学になるはずだ。

 高校入学の時に引っ越してきたのだから、樹くんが中学の時にいなかったっていうわけらしい。


「あ、今日は遅くなっちゃったから難しいけど、今度遊びにおいでよ」

「えっ……。いいの?」


 突然の嬉しいお誘いに驚いてしまう。

 い、家に誘ってくれるなんて。これってかなり親密な仲ってことじゃない?……って喜んだ私だったけれど。


「うん、もちろん。友達だし」

 
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