君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
「あ、母さん」


 やっぱり樹くんのお母さんだったみたいだ。

 友達と一緒にいるところを見られたからか、ちょっと罰悪そうな顔をして樹くんは言った。


「こんにちは、おばさん」

「こ、こんにちは」


 悟くんが樹くんのお母さんに向かって挨拶をしたので、私は慌ててそれに続く。――すると。


「あらっ。樹の彼女さんの!」

「……えっ!?」


 のほほんとした表情のまま、とんでもないことを樹くんのお母さんが言ったので、私は慌ててしまう。

 か、彼女!?

 私はそんなんでは……!

 いや、そうなりたいけれど、残念ながら違います!


「は!? ちげーよ友達だし。……ったく母さんは」


 慌ててしまった私の代わりに、樹くんが苦い顔をしながらも言ってくれた。

 だけどお母さんは、納得いかないような顔をしていた。


「ええー、だってあんたのスマホの待ち受け、この子とのプリクラじゃなーい? しょっちゅうニヤニヤしながら見てるから、てっきりそうなのかと思ったわよ~。それに樹って、小さい時から栞ちゃんみたいな清楚系が好みじゃなーい?」

「はっ!? な、何言ってんだよもう!」


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