君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 気になってしまった私は、しばらくの間ぼんやりとふたりが入った家の扉を眺めてしまった。

 だけどすぐにハッとして、踵を返して歩き出す。

 家の前でぼーっと立っているなんて、なんかストーカーみたいであやしいってば。

 私はひとりで帰り道を歩きながら、今日の樹くんの様子や自分の行動を思い返した。

 少し積極的にはなれたと思う。

 自分から手を繋ぎにいったなんて、我ながら頑張ったって。

 だけど樹くんは、特にいつもと変わらなかった。

 やっぱり誰からも好かれている樹くんに恋をするなんて、ちょっと身の程知らずだよね……。

 少し冷静になると、いつもそう思ってしまう。

 でもどうしても、樹くんに恋をする気持ちは消えてくれないのだった。

< 150 / 216 >

この作品をシェア

pagetop