君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように

不穏な気配




「樹くん!」


 ある日の朝、教室に入るなり、彼の姿を見つけて私は駆け寄る。

 樹くんが学校に来たのは、何日ぶりだろう。

 たぶん、五日以上は経っていたと思う。

 樹くんは私の方を見ると、嬉しそうに微笑んだ。


「よっ、栞―。駆け寄ってきてくれるなんて、そんなに俺に会いたかった?」


 からかうように言ってくるので、照れてしまう。

 ――そ、そんなの会いたいに決まってるじゃない!

 だって好きなんだから……。


「し、心配だったから……」


 会いたい、って言うのはさすがに恥ずかしかったから、そうやって言葉を濁す。


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