君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 もちろんそうだったら、俺は死ぬほど嬉しい。

 この前栞の方から手を繋いできた時は、ちょっと期待もしてしまった。

 だけどそれまで俺の方から何度も手を繋いでいたから、栞も俺とそうする事に特別な意味を感じないようになっただけだって、俺は自分に言い聞かせた。

 だって、正直言ってそんなの困るから。

 俺はそんなこと望んでいない。

 まあ第一、栞が俺を好きなわけはない。


「はあ? 何だよそれ、栞が好きなのはお前じゃん」


 昔栞からラブレターをもらっている悟に、嫌味たっぷり言う。


「いや、そんなの昔のことじゃん。それに俺、あんなことしちゃったからもう嫌われてるよ」

「嫌われてたら、謝った時にあんな風に笑わねえよ。つーか俺、ふられてるし」

「えっ?」


 悟は虚を衝かれたような面持ちになった。

 別に栞に直接ふられたわけじゃない。

 でも、栞は好きな人がいるんだ。

 きっとそれは俺じゃないから、同じことだ。

 ――俺は栞との出会いを思い出した。

 同じクラスになった二年生からのことではなく、一年生の時に図書室で――それもノートの上での、本当の意味での最初の出会いについてを。

 あれは一年生になったばかりの頃だ。

 手術やら、余命やらについて告知された俺は、ひとりになりたくなって昼休みに図書室を訪れた。

 ちょうど図書室には誰もいなくって、静かな空間がとても居心地がよかった。
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