君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 俺みたいなチャラそうなやつが、図書館ノートをやり取りしている相手だって知られたら、栞をがっかりさせてしまうんじゃないか……そう思ったんだ。

 だから必要以上に近づかない方がいいなと思った。

 ――だけど。

 いつも親身に受け答えをしてくれる栞。

 俺が落ち込んでいると、いつも俺の望んでいる答えを書いてくれる栞。

 一年生が終わるころには、俺は栞を好きになってしまった。

 一度も話したこともないというのに。

 それに向こうは、俺のことを名前も顔も知らないというのに。

 だから二年生で同じクラスになれた時は、本当に嬉しかった。

 だけど栞は、話に聞いていた通りいつも教室では本を読んでいて、誰とも仲よくしようとはしなかった。

 用事をかこつけて何度か話しかけてみたけれど、必要最低限の受け答えしかしてくれなかった。

 ――チャラ男っぽい俺のこと、きっと怖がってるんだろうなあ。

 本当は早く仲良くなりたかったけれど、そう思えてなかなか一歩踏み出せなかった。

 そんなことをしているうちに、段々病気が進行してきてしまって、俺は栞と仲良くならなくてよかったと思っていた。

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