君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 だって、どうせ俺には未来なんてない。

 だから栞と仲良くなる必要なんてないんだって。

 ――だけど、あの日ついに関わってしまった。

 だって、保健室で休んでいたら、いきなり同じベッドに栞が飛び込んできたんだ。

 そんなの、関わらない方が無理だ。

 俺の目の前ですやすやと眠る栞を見たら、耐えられなかった。

 ――少しの間だけでも。

 ほんの少しの間だけでもいい。

 俺の短い一生の、最後に。

 好きな子と、仲良くする時間をください――そう思ってしまった。

 それで栞と関りを持つようになったら、彼女はノートの中とまったく同じで、他人を思いやれるとても優しい女の子だった。

 知れば知るほど、どんどん好きになってしまった。

 好きなったって意味がないのに、日に日に栞への思いは募っていった。

 時々、俺の気持ちも病気のこともすべて栞に打ち明けて、栞が受け入れてくれるのなら俺が死ぬまで恋人ごっこをしてくれないかって、お願いしようかと思ったこともあった。

 だけどそんなことをしてはだめだ、とすぐに俺は思い直すんだ。

 いなくなってしまう俺がそんなことを頼んだら。

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