君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 彼が私との関係を切ったわけじゃないんだって心から安堵しながら、彼が書いた返事を私は読んだ。

『ちょっと忙しくって、返事遅くなってごめんね。好きな人に、もう告白しちゃったら? 相手に思いを伝えるのってすごく大切だよ。たとえダメでも、言わないで後悔するよりはマシだよ』


 ――後悔するよりマシ、かあ。

 本当にそうだなって素直に思った。

 ノートの彼が言っていることは、なぜかスッと心に落ちる。

 一年以上もやり取りを続けていたから、彼に対する信頼が大きいんだと思う。

 昔告白で失敗した時、あの直後はラブレターなんて書かなきゃよかったと思った。

 だけどあんなことがあったにも関わらず、今ではちゃんと伝えられてよかったと思っている。

 あの時のあの出来事がなければ、私はきっとあの時ほど引っ込み思案じゃない。

 だからきっと、図書館ノートなんて気に留める暇がなかったと思う。

 それに本に夢中になって徹夜をして、保健室に行くことだってなかったかもしれない。

 ――つまり、樹くんとだってこんなに仲良くなっていないかも。

 あの時頑張って行動したからこそ、今がある。

< 171 / 216 >

この作品をシェア

pagetop