君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 その時は失敗だって思っても、頑張ったことってきっと何も無駄じゃないんだ。

 ノートの彼に励まされたり、樹くんに恋をすることができた今の私は、そう考えられるようになっていた。

 ――よし。

 私は『うん、頑張ってみる。いつもありがとう』とだけ書いてノートを閉じた。

 私は決意したんだ。

 今日図書委員の仕事が終わった後、樹くんと一緒に帰る約束をしている。

 その時に私の自分の気持ちを打ち明けよう。

 樹くんに好きだって告白しよう。

 閉じたノートの表紙が目に入ると、なんだか感慨深い気持ちになった。

 ずっとこのノートに私は励まされていたんだ。

 ノート越しにしか会えないあなたに。

 私はノートを自分の鞄の中にしまった。

 今まで図書室から持ち出したことは無い。

 私の私物ではなく利用者みんなの物だから、本当は個人的に持って帰っちゃダメな物だけど……。

 でも今日だけ。

 今日だけ、好きな人に好きだとちゃんと伝えために、私のお守りになってください。

 そして仕事を終えた私は、図書館ノートが入った鞄を抱えて、樹くんが待っている校門へと向かったのだった。


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