君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
樹くんの真実
*
――なんだか、今日の樹くんは普段と違う気がする。
「それで悟がさ怒ってさー。めっちゃ笑えない?」
「あはは、そうだね」
いつものように、他愛のない話をしながら並んで歩いて下校する私たち。
樹くんの話に合わせて、私も相槌を打ったり笑ったりしていたけれど。
やっぱり彼がいつもと様子が違うように思えたので、気になってしまった。
一見彼はいつも通りだ。
いつものように、優しく微笑んで、私の歩調に合わせて歩いて、楽しそうに話してくれている。
――だけど。
なんだかたまに、心ここにあらずという印象を受ける時があった。
一瞬だけ、ぼんやりとした瞳で虚空を眺める瞬間があった。
そして何度か「あのさ、栞」と真剣な口調で何かを話しだそうとしてくるから、私が身構えると、一瞬黙ってからクラスのこととか本のこととか、いつも通りの話題を出してくる。
――何か他のことを言おうとして、やめたみたいだ。
というか、今の私もまさにそうだった。
――なんだか、今日の樹くんは普段と違う気がする。
「それで悟がさ怒ってさー。めっちゃ笑えない?」
「あはは、そうだね」
いつものように、他愛のない話をしながら並んで歩いて下校する私たち。
樹くんの話に合わせて、私も相槌を打ったり笑ったりしていたけれど。
やっぱり彼がいつもと様子が違うように思えたので、気になってしまった。
一見彼はいつも通りだ。
いつものように、優しく微笑んで、私の歩調に合わせて歩いて、楽しそうに話してくれている。
――だけど。
なんだかたまに、心ここにあらずという印象を受ける時があった。
一瞬だけ、ぼんやりとした瞳で虚空を眺める瞬間があった。
そして何度か「あのさ、栞」と真剣な口調で何かを話しだそうとしてくるから、私が身構えると、一瞬黙ってからクラスのこととか本のこととか、いつも通りの話題を出してくる。
――何か他のことを言おうとして、やめたみたいだ。
というか、今の私もまさにそうだった。