君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 私もさっきから何度も、告白しようと決意して「あのね、樹くん」と言った後、やっぱりびびってしまってどうでもいい話をしてしまっていた。

 樹くんも同じような行動を取っていたから、私と同じで「何か重要なことを言いたいけれどなかなか言い出せない」状況なんじゃないかって思えたんだ。


「栞、もしかして俺に何か言いたいことある?」


 樹くんも同じように察したらしい。

 もう少しで別れ道になりそうな場所で、私が焦り出した頃にそう言った。

 樹くんも、別れる前に言わなきゃって思ったのかな……。


「え……。うん、あるよ。でも樹くんもじゃない?」

「あー……うん」


 らしくもなく、樹くんはなんだか歯切れの悪い調子で言った。

 言いたいことがあるのなら、迷わずに言ってしまいそうな人なのに。

 そんなに言いづらいことなのかな?と、ちょっと私は不安になる。

 私より……愛の告白より言いづらいことなんて、どう考えてもなさそうだけどね。

 そう思った私は、彼に向かってこう言った。


「そ、それじゃあ樹くんの方からどうぞ」

「えっ? 栞から言ってよ~」


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